[環境色彩コンペティション]

GPCグッドペインティングカラー

~第25回グッド・ペインティング・カラー 受賞作品~

環境色彩コンペティション・第25回グッド・ペインティング・カラー(GPC)の審査会を2022年11月21日に東京塗料会館にて実施致しました。

新築、改修、戸建改修、内装の4部門にて作品を公募し、全部で81作品の応募をいただきました。
部門別の応募数は、新築部門が7作品、改修部門が19作品、戸建改修部門が51作品、内装部門が4作品でした。
表彰式は2023年1月6日に東京塗料会館にて執り行います。

審査は、次の4名の審査委員にお願い致しました。

審査委員長
赤木 重文  一般財団法人 日本色彩研究所 理事長
審査委員
田嶋 豊  株式会社ランドスケープデザイン 設計部部長
永井 香織  日本大学生産工学部建築工学科 教授 工学博士
桜井 輝子  東京カラーズ株式会社 代表取締役

次の通り、合計13作品の入賞作品が決定致しました。

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部門 作品名 作品
区分
所在地 受賞代表者/所属先
新築 最優秀賞豊洲ベイサイドクロス 内外装
企業施設
東京都 渡邊 岳彦
大成建設株式会社
優秀賞The Westin Yokohama・
The Apartment Bay YOKOHAMA
外装
その他
神奈川県近藤 崇
株式会社 日本設計
特別賞鹿児島市中央卸売市場魚類市場 市場棟 外装
公共施設
鹿児島県 南浦 琢磨
株式会社 安井建築設計事務所
特別賞ヒガシマル醬油株式会社 大阪支店 内外装
企業施設
大阪府 松島 茂樹
鹿島建設株式会社
改修 優秀賞 アーバンラフレ虹ヶ丘南 外装
集合住宅
愛知県 山本 慶三
株式会社 集研設計
優秀賞コンフォール篠原外装
集合住宅
神奈川県児平 亜由子
独立行政法人都市再生機構
優秀賞尾山台団地外装
集合住宅
埼玉県坂部 浩史
独立行政法人都市再生機構
特別賞ボナール細田外装
集合住宅
東京都池田 麻紀
日本ペイント株式会社
特別賞若松二丁目団地2-6-1号棟内外装
集合住宅
千葉県鈴木 陽子
独立行政法人都市再生機構
戸建
改修
優秀賞Y様邸外装
個人住宅
大阪府高山 裕樹
株式会社 杉本建装工業
特別賞M様邸 外装
個人住宅
千葉県鬼原 裕之
茂原住宅塗装
内装 優秀賞オリコ研修センター内装
企業施設
東京都宮下 信顕
エムアールスタジオ株式会社
特別賞日本ペイント防食コーティングス株式会社
技術事務厚生棟
内装
企業施設
千葉県佐藤 純子
日本ペイント株式会社

▼新築部門:最優秀賞

物件名 豊洲ベイサイドクロス

内外装/企業施設

所在地:東京都

受賞代表者 渡邊 岳彦/大成建設株式会社

GPC2022新築部門最優秀賞「豊洲ベイサイドクロス」渡邊 岳彦 氏/大成建設株式会社
GPC2022新築部門最優秀賞「豊洲ベイサイドクロス」外装アップ・内装

審査員コメント
本物件は規模や形状の違う2つの高層棟からなり、高い棟は付属棟を従えているので高層部分にゆとりのある空間が生まれ、またもう一方の棟は西側のコーナーが曲面形状で、直方体の高層棟に寄り添いながら、柔らかで開放的な空間を生み出している。
選定された各部位の色彩は、当該エリアのこの構造の特徴が最大限に生かされ、さらに周辺環境との親和性も高く、東京の臨海部らしい建造物となっている。
白ボーダーが建物を分節するとともに、施設コンセプトも表現している。平滑なボーダーではなく一部庇を立体化し陰影をつくることで、眺望地点によって様々な表情が現われてくる。
内装においても周辺の環境「海、空、光など」を想起させる素材や曲線を活用して、開放的で心地よい内部空間を実現している。

▼新築部門:優秀賞

物件名 The Westin Yokohama・
The Apartment Bay YOKOHAMA

外装/その他

所在地:神奈川県

受賞代表者 近藤 崇/株式会社 日本設計

GPC2022新築部門:優秀賞「The Westin Yokohama・The Apartment Bay YOKOHAMA」近藤 崇 氏/株式会社 日本設計

審査員コメント
本物件は立地地域の都市景観形成ガイドラインで示された明るい色調による周辺景観との融和性を図りながら、庇の水平基調による陰影によって風格のある外観をもめざした。建物部位ごとにきめ細かな色彩指針を立案することによってこのコンセプトは実現されている。
周辺には木質ルーパーなどで同様の形状が多くみられるが、選定した色彩の効果によって、それらの建物とも調和がとれている。庇の裏面塗装で、視距離による見えの変化を実現するアイデアは斬新で効果も高い。遠景、中景、近景を踏まえて、大規模な建物の周辺環境への影響も十分に考慮されている。
また、内部空間における色彩効果についても配慮されており、客室内から見る外装部位はインテリアとも調和している。

▼新築部門:特別賞

物件名 鹿児島市中央卸売市場魚類市場 市場棟

外装/公共施設

所在地:鹿児島県

受賞代表者 南浦 琢磨/株式会社 安井建築設計事務所

GPC2022新築部門:特別賞「鹿児島市中央卸売市場魚類市場 市場棟」南浦 琢磨 氏/株式会社 安井建築設計事務所

審査員コメント
本件の立地は港湾地区であるが最も重要な景観的特徴は、対象物件を一望できる展望台からその背景に錦江湾と桜島を同時に眺望できることであろう。
港湾地区はとかく機能重視で、その時々に必要に迫られて施設や工作物が増えていく傾向があり、景観的には乱雑な印象を与える中小規模の港湾地区も少なくない。本物件の周りにある建築物や構造物を見てもその傾向が垣間見える。
新たに建設された市場棟は、様々な機能を持つ部位を水平基調ですっきりとまとめ、背景の豊かな自然景観を阻害しない無彩色で仕上げている。良好な景観的特長を際立たせ、今後の景観を先導する施設として位置付けることができる。無彩色の明度コントロールで建物形態の特徴を引き立たせ、シンプルであるが色彩の効果を感じさせる提案となっている。

▼新築部門:特別賞

物件名 ヒガシマル醬油株式会社 大阪支店

内外装/企業施設

所在地:大阪府

受賞代表者 松島 茂樹/鹿島建設株式会社

GPC2022新築部門:特別賞「ヒガシマル醬油株式会社 大阪支店」松島 茂樹 氏/鹿島建設株式会社

審査員コメント
本物件は醬油メーカーの新社屋であり、設計コンセプトは醤油の製造プロセスを大切にするという思いを反映させた「素材の持ち味を生かす」ということである。そのコンセプトを実現するために、ガラス繊維強化コンクリートという素材にカラークリャーラッカーの塗装で仕上げているが、素材による造形も塗装も丹念な手 仕事によって製作されたとのことである。
手づくりで作成されたテクスチャー表現と大胆なファサードデザインにより、現代的なデザインセンスとオーガニックな表現が共存するバランスの取れた外観となっている。着工前と比較すると地区景観全体の質が向上した印象である。

▼改修部門:優秀賞

物件名 アーバンラフレ虹ヶ丘南

外装/集合住宅

所在地:愛知県

受賞代表者 山本 慶三/株式会社 集研設計

GPC2022改修部門:優秀賞「アーバンラフレ虹ヶ丘南」山本 慶三 氏/株式会社 集研設計

審査員コメント
色彩によって、対象物件の景観だけではなく地域のブランディングに寄与することを踏まえ、周辺地域全体の印象を整えようとするコンセプトが評価された。
改修前のアースカラーによる低コントラストの表情から、明度コントロールによるメリハリのきいた色彩選定により、近年のスタイリッシュな志向を実現している。またエントランスなど低層部では質感にこだわり上質な雰囲気となっている。
広域的な視点でエリアの価値の向上を目指した色彩計画の好例である。

▼改修部門:優秀賞

物件名 コンフォール篠原

外装/集合住宅

所在地:神奈川県

受賞代表者 児平 亜由子/独立行政法人都市再生機構

GPC2022改修部門:優秀賞「コンフォール篠原」児平 亜由子 氏/独立行政法人都市再生機構

審査員コメント
本件は改修にあたって、計画前の問題点と色彩設計の方針について幾つかのポイントをあげている。問題点については「新たな分譲マンションの建築により周辺環境調和が感じられなくなったこと」を、色彩設計の方針については「住棟形状や配置の特徴を生かした塗分け」「豊富な緑に映える色彩の採用」「スタイリッシュな色彩を施し景観にリズム感を与える」などをあげている。
このポイントを地区のゾーニングや検討部位の抽出を通して色彩設計に落とし込んでいる。その結果は、選定された色彩によって対象の表情が劇的な変貌を遂げるという性格のものではなく、順を追って丁寧に構築された色彩計画であり、目新しさはないが景観との調和は申し分ない出来栄えである。
周辺環境との関係性を穏やかに調整するのも環境色彩としては重要である。

▼改修部門:優秀賞

物件名 尾山台団地

外装/集合住宅

所在地:埼玉県

受賞代表者 坂部 浩史/独立行政法人都市再生機構

GPC2022改修部門:優秀賞「尾山台団地」坂部 浩史 氏/独立行政法人都市再生機構

審査員コメント
本件のテーマは「地域の歴史と自然に触れる団地」である。
このテーマに沿った色彩の展開として、この地域にある遺跡の歴史的イメージから連想される色や日本の伝統色を配色素材として抽出している。さらに色彩設計のキーポイントとして着目したのが当該団地の特徴的な3つの視点場「幹線道路からの視点場」「鉄道からの視点場」「団地内広場からの視点場」である。
これらの視点場ごとにきめ細やかなカラースキームが施され、改修後の景観は斬新な変貌を遂げた。物件の立面ごとに塗分けの面積や位置を調整するなど、設計者の技量の高さを感じさせる作品である。

▼改修部門:特別賞

物件名 ボナール細田

外装/集合住宅

所在地:東京都

受賞代表者 池田 麻紀/日本ペイント株式会社

GPC2022改修部門:特別賞「ボナール細田」池田 麻紀 氏/日本ペイント株式会

審査員コメント
本件は色彩ガイドラインの適用を受ける規模に達していないため届け出の必要はないものの、周辺環境は穏やかで落ち着きのある住宅街であり、その印象を壊さない色彩を選定することとしている。
その方針を含めて色彩設計指針として隔代に合うデザイン」「多くの人に好まれるデザイン」「閑静な住宅街に調和する配色」の3点をあげている。
改修に当たっては入居率の向上が優先的な条件になると、とかく図になるデザインを目指す傾向にあるが、周辺景観との調和性と物件の魅力づくりという二つの視点からバランスの取れた色彩設計であり、小規模な建物であっても周辺環境との調和を意識した提案は評価できる。このような取組がエリア全体の景観向上の底上げになると思われる。

▼改修部門:特別賞

物件名 若松二丁目団地2-6-1号棟

内外装/集合住宅

所在地:千葉県

受賞代表者 鈴木 陽子/独立行政法人都市再生機構

GPC2022改修部門:特別賞「若松二丁目団地2-6-1号棟」鈴木 陽子 氏/独立行政法人都市再生機構

審査員コメント
対象物件は長さが400mを超える長大な住棟であり、集合住宅としてはかなり特殊な形状である。改修前は外壁の色褪せや高層分譲マンションが周辺に林立してきたこともあり、街に埋没してきた感のある存在になったとのことである。
そのような状況を踏まえ、改修に当たってまとめた色彩計画指針として「新たな彩りと存在感を与える」「幅広い年代に受け入れられる色彩を目指し、シックでありながらもスタイリッシュな雰囲気をつくる」「周辺環境に馴染むように配慮しつつも、存在感を創出する」などがあげられている。
コントラストの強い「ホワイト」と「オフニュートラルのダークグレイ」を基調色、YR系の中彩度色をアクセントとした力強い表情を持ち、改修の効果は絶大である。表現力の強いアート的な環境デザインの今後の展開に変化が現れるのか興味深い。

▼戸建改修部門:優秀賞

物件名 Y様邸

外装/個人住宅

所在地:大阪府

受賞代表者 高山 裕樹/株式会社 杉本建装工業

GPC2022戸建て改修部門:優秀賞「Y様邸」高山 裕樹 氏/株式会社 杉本建装工業

審査員コメント
周辺の住宅や環境の色彩と相違ない色彩を選定するとの方針があげられ、結果、施工前より落ち着いた色合いに仕上がったとのことである。
施工前は屋根の軒先と壁面の胴差に、壁面よりやや主張の強いオレンジが用いられ、それが対象物件や周辺環境の一体感を阻害する印象の要因となっていたが、彩度・明度の修正によって格段に落ち着いた印象となり、外連味のない表情へと変わった。

▼戸建改修部門:特別賞

物件名 M様邸

外装/個人住宅

所在地:千葉県

受賞代表者 鬼原 裕之/茂原住宅塗装

GPC2022戸建て改修部門:特別賞「M様邸」鬼原 裕之 氏/茂原住宅塗装

審査員コメント
戸建住宅改修物件の応募書類には、ビフォーアフターの写真と色彩選定のコンセプトやプロセスが記載されるが、写真のみによる応募も少なくない。
そのような応募状況のなか、本件は色彩設計の経緯が丹念に記載されている。担当者の色彩に対する熱意が伝わってくる。
改修にあたっては、施主から出てきた数々の条件を整理して進めているが、特に「おしゃれにかわいく仕上げてほしい。」という要望に対して、ここまで調整してまとめた提案力には並々ならぬ技術力を感じる。

▼内装部門:優秀賞

物件名 オリコ研修センター

内装/企業施設

所在地:東京都

受賞代表者 宮下 信顕/エムアールスタジオ株式会社

GPC2022内装部門:優秀賞「オリコ研修センター」宮下 信顕 氏/エムアールスタジオ株式会社

審査員コメント
改修前は別会社の研修所として設計建設されており、写真を見る限りでは一時代前の一般的な企業研修所である。公共的な研修所ではないので宿泊室はプライパシーのない大部屋となっていた。
改修では宿泊室がワークスペースとペッドを備えたカプセルユニットが導入されたがその他の建築要素はそのまま生かし、塗装のみでクライアント企業のビジュアルアイデンティティーを大胆に表現した内部空間に変貌した。
特定企業の研修センターという特殊な用途を持つ空間ならではのインテリアに仕上がっている。コーポレートカラーを活用したグラフィカルな表現により、スタイリッシュで活気のある研修センターが生まれた。

▼内装部門:特別賞

物件名 日本ペイント防食コーティングス株式会社技術事務厚生棟

内装/企業施設

所在地:千葉県

受賞代表者 佐藤 純子/日本ペイント株式会社

GPC2022内装部門:特別賞「日本ペイント防食コーティングス株式会社技術事務厚生棟」佐藤 純子 氏/日本ペイント株式会社

審査員コメント
新社屋全エリアの内装を塗装で仕上げた物件である。全居室のベースカラーを選定した後、主要なエリアについて特殊多彩意匠仕上材によるアクセントデザインを施している。
エリアの用途により、「エントランス」などには高級で華やかなタベストリー的なイメージのアクセント、「食堂]はフレッシュな印象で広い面積の仕上げに、さらに「会議室」は寒色系の索材感を伴う部分壁といった扱いで展開されている。
事務所内部の各エリアの用途を条件としながら、また選定した塗料の機能を生かしながら、繊細な感性で仕上げている。特にタペストリー風の塗装仕上はフォーカルポイントの在り方としても斬新であり、質感を伴う特殊仕上材の今後の可能性を感じさせてくれる。

第25回グッド・ペインティング・カラー概要

主催団体
(一社)日本塗料工業会、日本塗料商業組合、(一社)日本塗装工業会
後援
経済産業省、国土交通省
報道関係協賛
(株)日刊工業新聞社 (株)化学工業日報社 (株)日刊建設工業新聞社 (株)日刊建設通信新聞社
協賛団体
東京商工会議所 (一社)全国建設業協会 (一社)日本建材・住宅設備産業協会 (公社)日本建築士会連合会 (一社)日本建築学会 日本建築仕上学会 (一社)日本色彩学会 (一財)日本色彩研究所 (一社)色材協会
(順不同)