防汚剤及び防汚塗料の自主登録管理
日塗工リスク評価・登録防汚剤リスト
防汚剤登録申請者(以下「申請者」という)は、国際標準 ISO 13073-1i) を基に技術的内容とその構成を変更することなく作成された JIS F 0600-1ii)及び一般社団法人日本塗料工業会(以下「日塗工」という)が用意した MAM-PECモデルを用いて、防汚剤の海洋環境に対するリスク評価(以下「リスク評価」という)を自主的に行い、その結果をもって当該防汚剤の登録を日塗工に申請します。
日塗工は防汚剤リスク評価審査委員会(以下「委員会」という)を設置し、申請者から提出された各種データ及び資料に基づくリスク評価の手法とその結果について妥当性を審査します。
委員会による審査においてJIS F 0600-1に則って妥当であるとの結果を得た場合、日塗工は、申請された防汚剤の海洋への溶出による環境リスクが適切に管理できるものであると認め、登録防汚剤として日塗工リスク評価・登録防汚剤リストに登録しています。同リストは以下に示します。
i) ISO 13073-1:Ships and marine technology - Risk assessment on anti-fouling systems on ships – Part 1: Marine environmental risk assessment method of biocidally active substances used for anti-fouling systems on ships
ii) JIS F 0600-1 船舶及び海洋技術-船舶の防汚方法に関するリスク評価-第1部:船舶の防汚方法に用いる殺生物活性物質の海洋環境リスク評価法
2019年10月25日現在の登録防汚剤:計1製品
登録番号 | JPMA-B001 |
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申請者名 | ロンザジャパン株式会社 |
製品名 | カッパーオマジンパウダー Copper Omadine Powder |
防汚剤の名称 | ビス(2-スルフィドピリジン-1-オラト)銅 Bis(1-hydroxy-1H-pyridine-2-thionato-O,S)copper |
(略称、通称) | (銅ピリチオン) ( Copper pyrithione ) |
CAS No | 14915-37-8 |
リスク評価結果 | 本リスク評価の範囲においてリスクの懸念が低い |
(使用制限の有無) | (本製品の使用条件に特段の制限はない) |
申請受理日 | 2016/12/12 |
審査状況 | 完了(登録済み) |
登録日 | 2019/10/25 |
委員会コメント | 申請者の実施した海洋環境に対するリスク評価は、 JIS F 0600-1に則って実施されている。 ただし、本物質の分解生成物である銅について 審査対象外としていることに留意されたい。 なお、提出された試験報告書が一部抜粋されたものであることから、 リスク評価に用いた試験データそのものの 妥当性は審査の対象としていない。 |
【留意事項】
- ・登録された防汚剤は、代表的な防汚塗料に使用された場合の防汚剤として、実施された海洋環境へのリスク評価の手法及び結果が妥当であることを申請者から提供されたデータ及び資料に基づいて確認したもので、登録された防汚剤を使用したすべての防汚塗料のリスク評価手法及び妥当性が確認されたものではありません。
- ・登録防汚剤を使用した防汚塗料の登録を希望される場合は、防汚塗料申請者から防汚剤申請者に問い合わせて登録防汚剤のデータを入手し、海洋環境へのリスク評価を実施し、その結果をもって登録申請いただき、防汚塗料の審査を受けていただきます。
- ・自主管理制度の背景、目的及び概要等については、下記をご参照下さい。
1.背景
船舶の船底にフジツボや藻類等の生物の付着を抑える目的で使用されている主な防汚方法は、生物活性を示す防汚剤が船底塗膜表面から海に意図的に溶出する機構を有している。
2001年10月の国際海事機構(IMO)外交会議で採択された「二千一年の船舶の有害な防汚方法の規制に関する国際条約」(以下、「AFS条約」という。)は防汚方法による海洋環境及び人健康への悪影響の減少又は廃絶を目的としており、条約採択と同時に採択された決議三では、防汚剤溶出被覆調剤の適切な認証制度を確立することを各国に求めている。AFS条約の基本思想に対応するためには、海洋環境影響を考慮した環境リスク評価、及び認証制度が必要であり、国際標準化機構(ISO)TC8/SC2においてリスク評価手法が標準化されている。
一方、化学物質の国際的取組みとしては、2002年開催のヨハネスブルグ・サミットを受け、2006年2月の「国際化学物質管理会議」(ICCM)において、「国際的化学物質管理戦略」(SAICM)が採択された。その目標の一つとして、化学物質が人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成すると掲げている。これを受け、わが国では、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律」(以下「改正化審法という。)が2010年4月に施行され、これまでのハザードベースでの化学物質の管理からリスクベースでの管理へと規制体系が変更された。
このような背景のもと、船舶の船底で使用されている防汚剤を含有した塗料等は、この環境リスク評価の管理が最も重要となり、一般社団法人日本塗料工業会としては、海洋環境の保全のため、ここに当該法律の理念に則った、防汚剤及び防汚塗料の自主登録管理システムを構築することとなった。
2.目的
海洋環境の保全のため、申請される防汚剤及び防汚塗料製品の自主管理の妥当性を審査すること。
また、化審法で要求される環境リスク評価に利用できる情報を整備することである。
3.自主管理の概要
登録申請にあたり、防汚剤については生態毒性、分解性、生物蓄積性等のハザード情報等に基づく環境リスク評価結果、防汚塗料については塗膜からの溶出速度に関する情報等に基づく環境リスク評価結果の提出が必要である。
日塗工は、外部有識者で構成する審査委員会を設置し、提出された情報を基に、防汚剤及び防汚塗料の環境リスク評価手法の妥当性についての審査を委託する。
海洋環境リスク評価方法は、国際標準ISO13073 Marine environment protection-Risk assessment on anti-fouling systems on ships(海洋環境保全 船舶防汚システムのリスクアセスメント)に基づく。暴露シナリオは、日本の代表港湾とする。
日塗工は、審査委員会の通知を受け、審査委員会の審査結果を申請者に書面で通知し、申請者により海洋環境保全を目的とした環境リスク自主管理が適切に実施されていると評価された防汚剤及び防汚塗料の各製品名を日塗工のホームページに公開する。
防汚剤及び防汚塗料の自主登録管理の流れ
4.審査委員会の構成
審査委員会は、生態毒性学、化学物質の環境挙動、環境リスク評価等に関する専門家で構成する。
5.登録申請をご希望の方へ
(一社)日本塗料工業会にお問い合わせ下さい。
お問い合わせはメールのみで受け付けております。
[お問い合わせ先]
※登録とは、海洋への溶出による環境リスクが適切に管理できる製品として日塗工ホームページに公表することと同義である。