[第17回環境色彩コンペティション]
~審査結果~
環境色彩コンペティション・第17回グッド・ペインティング・カラーの審査会(全応募数67作品)を平成26年11月21日に東京塗料会館にて開催し、以下の作品が選ばれました。
表彰式は平成27年1月7日に行われました。
部門 | 賞 | 作品名 | 作品区分 | 所在地 | 受賞代表者/所属先 |
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新築 | 最優秀賞 | パーパス富士宮工場 エコベストファーム |
外装 企業施設 |
静岡県 | 中楯 哲史 株式会社 竹中工務店 |
優秀賞 | コマツ福光荘、 コマツNTC福光 寮 |
外装 企業施設 |
富山県 | 村元 徹 大成建設株式会社 一級建築士事務所 |
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特別賞 | 関西ペイント株式会社 平塚事業所事務厚生棟 |
内外装 企業施設 |
神奈川県 | 宮川 理香 関西ペイント株式会社 |
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改修 | 最優秀賞 | 里美大橋 | 外装 公共施設 |
茨城県 | 宮脇 ひろみ 大日本塗料株式会社 |
優秀賞 | 海神コーポ | 外装 集合住宅 |
千葉県 | 千賀 恵美子 日本ペイント販売株式会社 ほか |
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特別賞 | UR都市機構 夕陽丘市街地住宅 |
外装 集合住宅 |
大阪府 | 加藤 精一 株式会社 ジャス ほか |
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戸建 改修 |
優秀賞 | ( 該当作 なし) | |||
特別賞 | マークスプリングスCASA (サウスブロック5邸) |
外装 個人住宅 |
神奈川県 | 千賀 恵美子 日本ペイント販売株式会社 |
(同一賞内順不同。 ※受賞代表者所属先の後に「ほか」表示分は、別所属の共同応募者がある場合)
物件名 | パーパス富士宮工場 エコベストファーム | 外装/企業施設 所在地:静岡県 |
受賞代表者 | 中楯 哲史/株式会社 竹中工務店、ほか |
富士山麓の環境特性や植生、地理的条件を巧みに取り入れた色彩計画は秀逸である。緑の使い方は自然景観の中では意外に難しいが、トーンを調整し周辺の自然景観に調和した印象を引き出している。また、色だけではなく外壁リブパターンピッチを変化させている点も良好な景観形成に寄与している。
物件名 | コマツ福光荘、コマツNTC福光寮 | 外装/企業施設 所在地:富山県 |
受賞代表者 | 村元 徹/大成建設株式会社一級建築士事務所 |
周辺環境の特徴である棚田の形状や伝統的な民家の構造や色調を巧みに取り入れ、現代的でスタイリッシュなデザインにまとめている。YR系のブロックごとの塗装で圧迫感を軽減し、全体景観として馴染んでいる様子が伺える。
物件名 | 関西ペイント株式会社 平塚事業所事務厚生棟 | 内外装/公共施設 所在地:神奈川県 |
受賞代表者 | 宮川 理香/関西ペイント株式会社 |
外装は積層構造の形状がモノクロの色彩でシャープに表現され、対照的に内装は機能的な有彩色の色遣いが空間に活力を与えている。外装については、改修部門に応募のあった守衛所とも共通のイメージを持たせているので、建造物の外観を通して企業が発信しようとするイメージを統一していく姿勢が感じられる。
物件名 | 里美大橋 | 外装/公共施設 所在地:茨城県 |
受賞代表者 | 宮脇 ひろみ/大日本塗料株式会社 |
四季折々の自然環境の変化とそれに伴う橋梁の見え方を視野に入れた色彩計画である。グリーニッシュな色彩をトーンや色みの調整によって、多様な色合いを見せる四季の自然景観にマッチさせるとともに、橋梁の構造美を引き出している。繊細な色調整に、新たなチャレンジを感じさせる計画である。
物件名 | 海神コーポ | 外装/集合住宅 所在地:千葉県 |
受賞代表者 | 千賀 恵美子/日本ペイント販売株式会社、ほか |
長大な壁面をブラウン系で分節化しつつリズミカルに配色し、調和を前提としながら様々な視距離に対して飽きの来ない表情を作り出している。日本の風土としてのアースカラーを使い、優良な景観のベース形成にチャレンジする姿勢は今後ますます重要になると思われる。
物件名 | UR都市機構 夕陽丘市街地住宅 | 外装/集合住宅 所在地:大阪府 |
受賞代表者 | 加藤 精一/株式会社ジャス、ほか |
周辺環境を取り込んだ調和性やテーマ性、また魅力的な空間創りのための演出性など様々な角度から検討を加えている。その実現のために多くのアイデアを出し実行している。丁寧な日本のモノ作りの姿勢が環境色彩設計に結実した感がある。チャレンジ精神とその実行力を評価する。
物件名 | マークスプリングスCASA(サウスブロック5邸) |
外装/個人住宅 所在地:神奈川県 |
受賞代表者 | 千賀 恵美子/日本ペイント販売株式会社 |
87棟ある地区での合意形成を評価した。個々の住宅の色彩設計の方向性を一致させることにより、街並みが全体景観としての発信力を持っている。万人受けするテイスト感ではないが、色彩による街並み形成を資産と考え住民の合意を得て実施し、ブロック全体の雰囲気を変えることができた好例である。
第17回グッド・ペインティング・カラー概要
主 催 |
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審査委員 |
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応募総数 | 67作品 |
審査日 | 平成26年11月21日 於:東京塗料会館 |
~総評~
グッドペインティングカラーは今年度で第17回を迎えることとなりましたが、今回は3部門で合計7件の作品が賞に選ばれました。
今回の審査会を終えた後の全体的な印象ですが、大きく二つの傾向をあげることができます。一つは日本の風土的特徴を育てつつ良好な景観形成を模索する姿勢です。それはアースカラーやグリーン系の色彩を用いた作品に見ることができます。特にグリーンは色名からは「自然・さわやか」などのイメージを連想しますが、建造物の色として用いるには調整の難しい色です。今回は調整に成功した2件が受賞しています。
もう一つの傾向ですが、ここ何年かで応募された作品や受賞した作品を連想させるものが散見されたように感じました。そのような傾向は今年に限ったことではないのですが、特に今回強く感じたのは理由がありそうです。設計対象物件を魅力的に仕上げるために様々な演出が施されていますが、その演出方法に理由の一つがあるように感じられました。例えば外装の色彩計画のプレゼンテーションとして内装の色彩を開口部から大きく取り上げたり、また夜間のライトアップのみを外装の設計案としてプレゼンする手法だったりします。何か演出性が独り歩きしているような様相が見受けられ、それが既視感に繋がっているように思われます。 風土に根差した景観的なベースがあいまいになりつつある近年、一つの対象物件における見せ方の演出性にのみこだわるのではなく、日本の景観の本質的なベースを再生し育んでいく姿勢が必要であると思います。
実はそのような姿勢を持つ作品が、今回多く受賞しています。
先ほど紹介したグリーンもそうです。またアースカラーを用いた改修作品には日本の風土を意識した枠組みの中で魅力づくりにチャレンジしている様子が伺えます。また無彩色におけるコントラストを意識した表情には和のテーストのデザインソースが垣間見えます。これらの要素を日本の景観ベースとして育て上げていくためには、テクニックや演出性も必要になりますが、個々の対象物件のみを魅力的に見せるのとは少し違う視点と目的意識が必要です。
今年の受賞作品を拝見して、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、海外からの来訪者に対して日本らしさをベースにした景観を披露するための取組が始まっていると感じた次第です。グッド・ペインティング・カラーには益々期待しています。